Vol.10


キーワード: 活字 写植 DTP フォント ポストスクリプト PSフォント

活字からフォントへ、文字表現の進歩の歴史。
ホントに難題ばかりでした。活字からフォントへ、文字表現の進歩の歴史。
小説が世に出ることなどを「活字になる」といいますが、
現実的には、活字から写植、そしてDTPという印刷技術の発達とともに、活字そのものは印刷の世界からほとんど姿を消しました。
いまDTPにおいて、かつての活字と同義語的な存在は「フォント」です。活字からフォントへ。今回はその進歩の歴史についてご紹介しましょう。

手近な雑誌を開いてみてください。写真やイラストがあり、そして様々な書体の文字が、様々な大きさで誌面を埋めています。


たとえばその文字が、すべて同じ大きさだったらどうでしょうか。
内容がどうであれ、その雑誌はひどくつまらないものに感じるはずです。


文字。
それはメッセージを伝えるためのものであると同時に、デザイン表現の重要なファクターでもあるわけです。


文字のバリエーションをいかにして豊かにするか―。


印刷の前段階のプロセスが、活字から写植、そしてDTPへと進化するなかで、そこには常に文字表現というテーマがありました。


たとえば、「活字」は文字や記号が逆向きに突起した四角柱状の鋳造物ですが、印鑑のような原理であるため、
文字表現を豊かにするには活字そのものをいくつも用意するしかありませんでした。

この活字に代わって登場した「写植」、これは写真のように露光と現像によって文字を印画紙に焼き付ける手法です。

写植では、レンズを使って文字の大小はもちろん、長短や傾きを変化させることも可能になり、
活字時代に比べて文字表現は飛躍的に豊かになりました。


そして、活字や写植のようなアナログな作業をデジタルの世界に持ち込んだものが「DTP」です。

DTPでは、写真やイラストの処理、文字入力、レイアウトなどがすべてコンピュータ上で行えるようになり、
印刷の前段階的工程は著しく合理化されました。


しかし、この画期的な技術もすぐに印刷・出版業界の主流となったわけではありません。
その理由は、やはり文字表現の問題でした。


DTPの世界では「特定のデザインを基調とした文字のグループ」のことを「フォント」と呼びますが、
当初フォントは自由な拡大・縮小ができなかったのです。

つまり、印刷プロセスの合理化と反対に、文字表現については写植時代よりも後退したことになります。


本格的なDTP時代の幕開けは、「ポストスクリプト」というコンピュータ言語に基づいた、
PSフォント」の登場を待たなければなりませんでした。


PSフォントによって、ようやく自由な表現力を得たフォント。


様々なOS環境や日本語への対応も進み、デジタル領域の文字の技術革新はいまも続いています。


普段、何気なく目にする印刷物の文字。
その裏にこのような歴史があったことを知ると、見慣れた雑誌も少し新鮮に感じられるかもしれません。

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